【夜職向け】ネットの誹謗中傷に関するよくある質問と回答

源氏名で働く女性がお仕事をする際にぶつかりがちな、爆サイ・ホスラブなどの匿名掲示板、ツイッターやインスタなどでの誹謗中傷トラブルに関して、よくある質問と回答をまとめました。

*あくまで一般的な回答なので、個別のケースに関する具体的な対応や手続き・費用等の詳細に関しては、弁護士に相談されることをお勧めします。

*マンガ「あしたの嬢」第1話 みんな悩んでる!掲示板やツイッターでの誹謗中傷 も合わせてご覧ください。

Q1:匿名掲示板の書き込みやSNSの投稿について、どのような内容が開示請求や損害賠償請求の対象になるのでしょうか?

A:開示請求や損害賠償請求の対象になるのは、大きく分けて以下の4つです。

1.名誉棄損・・・名誉を害する書き込み
(例)「あいつは犯罪者だ」「詐欺師だ」「コロナだ」など

2.プライバシー権の侵害・・・個人名や住所を書き込む、風俗で働いていることをばらすなど

3.肖像権の侵害・・・盗撮の画像をアップするなど

4.著作権の侵害・・写メ日記の画像を無断で使用する、アカウントのなりすましなど

Q2:表現の内容に対して、「ここまではセーフ(誹謗中傷にならない)だけれども、ここからはアウト(誹謗中傷になる)」のような基準はあるのでしょうか?

A:意見論評(=この事実に対して、自分はこう思う)であれば、違法にはなりません。人格攻撃(個人を否定するような書き込み)は、違法になる可能性があります。

・意見論評の例

「あの子のサービスは、あまりよくなかった」「接客態度が悪かった」

・誹謗中傷の例 

「あのサービスをしている××は、本当に気持ち悪い」
「人間として疑わしい」など

Q3:「意見論評」と「誹謗中傷」の違いは?

A:線引きは難しいです。裁判例も割れています。

人格に対する非難や、相手の社会的評価を下げるような非難である場合、違法なものとして判断されやすいですが、自分で判断せずに、弁護士の判断を仰ぐことをお勧めします。

Q4:以下の書き込みは、誹謗中傷になるのでしょうか?

●プレイの感想(接客態度が悪い、下手、サービスが雑など)

A:接客態度が悪い、サービスがよくないといった感想や評価については、誹謗中傷にはなりにくいです。飲食店の接客態度や料理の味について批判することが、それだけでは違法にならないことと同じです。

●外見に対する評価・批判(太っている、デブ、ブス、貧乳など)

A:ただ悪口を言うだけでは、違法にはなりません。開示請求を行える可能性はゼロではありませんが、五分五分です。慰謝料も高くならない可能性が高いです。

●源氏名に対する悪口(本番嬢、性病持ちなど)

A:源氏名に対しても、誹謗中傷は成立します。スレッドの流れや前後の文脈から、誰のことを書いているのか明らかに特定ができる場合は、誹謗中傷になります。「本番嬢」という呼び方は、女性を犯罪者扱いしていることになるので、名誉棄損に当たる可能性があります。

●伏字での悪口(××は裏で本番をやっている~など)

A:こちらも、特定の女性を示していることが、スレッド全体や前後の文脈で特定できれば、誹謗中傷に該当します。

●本名などの個人情報の一部を晒す(例:下の名前だけ、市区町村までを書き込む)

A:下の名前だけ、市区町村までであっても、名前の特徴などで、明らかに本人と特定できるような書き込みの場合は、プライバシーの侵害になります。

Q5:プライベートでやっているインスタやツイッターの匿名アカウントを、掲示板で「これ、●●ちゃんのアカウントだよ」とさらされてしまったのですが、削除請求や賠償請求はできるのでしょうか?

A:さらされたアカウントの内容によります。特定の個人につながっているアカウント(実名)であれば、削除請求や賠償請求は可能です。一方、さらされたアカウントが匿名の場合は、本人とのつながりが客観的に見て分からないので、難しいです。

Q6:匿名掲示板でかけもち先をばらされた場合、書き込んだ相手に削除請求や賠償請求はできるのでしょうか?

A:一般的には難しいです。

Q7:携帯やパソコンを変えれば、開示請求をされてもバレないのでしょうか?またネットカフェから投稿すれば、バレないのでしょうか?

A:使っている回線が一緒なのであれば、携帯やパソコンを変えてもバレます。

仮に回線を変えたとしても、当時契約していた情報はプロバイダ側に残っているので、そこから身元を特定される可能性はあります。

引っ越しをしたとしても、相手が弁護士に依頼して住民票を取り寄せた場合は、そこから身元を特定される可能性があります。

ネットカフェに関しても、弁護士に依頼してお店側に会員情報などを開示してもらえれば、いつ・誰が・どのブースから投稿したのかを割り出せるので、そこから身元を特定される可能性はあります。

Q8:どのくらい前の書き込みまで、開示請求できますか?

A:一般的には、3カ月から6カ月です。

プロバイダによって、書き込みの保存期間は異なります。今後法律が改正されて、保存期間が延びる可能性はあります。

開示請求を行いたい場合は、書き込みがあってから、少なくとも1か月以内に弁護士に相談されることをお勧めします。

Q9:開示請求をしたいと考えているのですが、費用はどれくらいかかるのでしょうか?分割払いは可能なのでしょうか?

A:開示請求にかかる費用は、おおむね60万~70万円程度です。

裁判所に払うお金(30万円程度)は分割できないので、最初からある程度まとまった費用が必要になります。

費用の分割払いに対応している弁護士もいますが、それほど多くはありません。

Q10:開示請求をして相手の身元を明らかにした後に損害賠償請求を行う場合、慰謝料よりも弁護士費用の方が高くなってしまうのでしょうか?

A:残念ながら、弁護士費用の方が高くなってしまうことが多いです。

名誉棄損に関しては、慰謝料の相場は40~60万円程度(最高でも100万円程度)です。

開示請求をした後に損害賠償請求を行う場合、さらに弁護士費用がかかるため、慰謝料を回収するまでに、最終的に100万円近い費用がかかります。

弁護士費用を相手に支払ってもらえるケースもありますが、あまり期待はしない方がいいです。

Q11:開示請求をしても、相手を特定できない場合はあるのですか?

A:特定できない場合は、残念ながらあります。

5ちゃんねるなど、海外にサーバーのあるサイトは、日本の裁判で勝ってもお金がとれない場合があります。

Q12:ホスラブ、爆サイ、5ちゃんねる、ツイッター、LINEなど、掲示板やSNSの種類によって、開示請求の難易度は変わるのですか?

A:変わります。裁判をしなくても開示してくれるところもあれば、裁判をしないと開示してくれないところもあります。

●ホスラブ・爆サイ・・・弁護士名で開示請求すれば、裁判をしなくても開示してくれることが多い

●5ちゃんねる・Twitter・・・基本的に裁判が必要

●LINE・・・難しい。弁護士会照会をしても、拒否されることが多い

Q13:相手に謝罪文を書かせて、SNSなどで公開させることは可能でしょうか?

A:公開させること自体は、違法ではありません。

ただ、炎上リスクもあるので、お互いの同意がなければやめた方がいいです。

Q14:ネット上では「判例ではこうなっているよ」という情報が出回っているのですが、信じていいのでしょうか?

A:ほぼ間違いだと思ってください。断定しているものは、全て間違いです。法律家が「これが絶対だ」と断定することは、まずありません。

「判例ではこうなっている」という場合でも、あくまで「その事件では、そのような判決が出た」というだけの話なので、目の前の事件とは違います。

ネット上の法律情報をそのまま信じてしまうことは、ネット上の医療情報を元にして、自分で自分を手術するようなものです。確実に失敗します。

時間とお金はかかりますが、専門家に聞くのがベストです。

Q15:開示請求をすると、家族に風俗の仕事がバレてしまうのでしょうか?

A:基本的に、バレるようなことはありません。弁護士に依頼すれば、まずバレる可能性はありません。

Q16:「開示請求をするぞ」とSNSで宣言することは、脅しになってしまうのでしょうか?

A:脅しにはなりません。

Q17:弁護士に依頼するお金が手元にないのですが、自分で裁判を進める(本人訴訟)ことは可能でしょうか?

A:可能ですが、お勧めはしません。

開示請求の場合、基本的に裁判をしなくてはいけないことになりますが、相手=プロバイダ側からはプロの弁護士が出てきます。

野球を始めたばかりの人間がメジャーリーガーに勝負を挑むようなもので、確実に負けます。

Q18:開示請求をして相手の身元を特定した後に警察に被害届を出せば、警察も刑事事件として動いてくれるのでしょうか?

A:難しいです。

ただ、脅迫や爆破・殺害予告などの悪質な書き込みの場合は、最初から警察に相談してください。警察の力で、相手の身元を特定してもらうことができます。

Q19:開示請求や訴訟をする場合、こちらの氏名(本名)や住所は、相手側に伝わってしまうのでしょうか?

A:開示請求だけの場合、住所は隠すことができます。

訴訟をする場合は、本名と住所は相手に伝わることになります。

しかし、「相手に本名と住所を伝えたくない」という要望があれば、弁護士や裁判所に依頼して、見せないようにすることができる場合もあります。

Q20:書き込みをした人物が複数いる場合、全員をまとめて訴えることはできるのでしょうか?

A:難しいです。投稿者ごとに投稿日時や内容が違うと、それぞれ侵害しているものが別になる可能性があるため、同じ裁判で一緒に手続きをすることは、基本的にできません。

Q21:訴訟を始めた後、ツイッターで「名誉棄損で訴えました!」とつぶやいたり、裁判の途中経過や、訴状や判決文の画像をSNSで公開しても大丈夫でしょうか?

A:相手の個人情報などのプライバシーを害さない限りは公開しても大丈夫ですが、逆に炎上してしまうリスクもあるので、一般の個人がやることはお勧めしません。

また、万が一裁判で負けた場合は、「名誉棄損でなかったのであれば、どんどん批判していいんだ」と思われてしまい、かえってダメージが大きくなってしまいます。裁判がどうなるか分からない段階では、公開はしないほうがいいです。

Q22:裁判で勝った後に、相手がお金を支払ってくれない、あるいはお金を全く持っていないことが分かった場合は、どうなるのでしょうか?

A:強制執行で、相手の給料や預金口座からお金を回収することはできます。しかし、相手がそもそもお金を持っていなければ、裁判で勝っても回収できないケースはあります。

<誹謗中傷の書き込みをしてしまった場合>

Q23:書き込んだ内容が、嘘ではなく真実であっても、誹謗中傷になってしまうのでしょうか?

A:真実であっても、名誉棄損やプライバシー侵害になることはあります。

「風俗で働いている」「AVに出演してる」「不倫している」などの書き込みは、事実であったとしても、本人の社会的評価を下げる可能性があるので、名誉棄損になる場合があります。

Q24:掲示板に特定の女性の悪口を書き込んでしまいました。プロバイダから自宅に「発信者情報開示に係る意見照会書」という書類が届いたのですが、どうすればいいのでしょうか?

A:必ず返答の期限を守ってください。

「開示には同意しない」と記入した上で、その投稿が名誉棄損に当たらない理由を書く形になりますが、結局自分がやったということを自白する形になってしまうこともあるので、自分で長く回答することはお勧めしません。弁護士に頼むのが一番です。

Q25:彼氏と同居しており、家のパソコンで掲示板に書き込みをしたら、彼氏宛に「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いてしまいました。どうすればいいでしょうか?

A:「彼氏がやった」という推定が働くので、彼氏に迷惑をかけないためには、「自分がやりました」と相手に伝えてしまう、という選択肢もあります。

Q26:開示請求されたり、訴えられた場合、家族や職場にもバレてしまうのでしょうか?どうにかバレない方法はないのでしょうか?

A:基本的には、家に郵便物が届くだけです。それを家族に見られないようにすればいいので、実家住まいでなければ、そもそもバレる心配はありません。

手紙が届いたら、すぐに相手の弁護士に連絡をすることが、バレないための一番の方法です。

Q27:訴訟を起こされる前に、相手との話し合いで解決する(示談をする)、ということは可能でしょうか?

A:可能です。基本的には、和解で終わらせるのがベストです。

相手の弁護士も、いきなり訴訟をしてくるようなことはありません。

まず「慰謝料を支払う気持ちがあるかどうか」という連絡が来るので、その時点で、きちんと相手の弁護士と話をした方が得です。

Q28:自分の情報が開示されてしまい、相手の弁護士から賠償請求の内容証明郵便が届きました。相手の請求する金額を払わないとダメなのでしょうか?

A:支払わないとダメ、ということはありません。

相手の弁護士に連絡を取って、「今はお金がない」「分割払いでもいいですか」等、交渉してみてください。

Q29:裁判で負けても、自己破産すれば賠償金は払わなくてOKになるのでしょうか?

A:自己破産が認められれば、払わなくてもOKです。

ただ、そもそも慰謝料の金額が低い(~数十万円)なので、自己破産するメリットはあまりないと思います。

Q30:弁護士に誹謗中傷の相談をする場合、相談の前に準備しておくことはありますか?

A:問題の書き込みが載っているページのURLを保存してください。

スクリーンショットで保存するときは、携帯ではURLが全て表示されないことが多いので、パソコンの画面で、問題の書き込みとURLが全てきれいに映っている形で保存してください。

Q31:開示請求をしてから慰謝料をもらえるまで、どのくらい時間がかかりますか?

A:おおむね一年間くらいです。

相手の特定までに半年、そこから慰謝料を請求して回収するまでに半年で、合計一年程度かかることが多いです。

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