大切なお知らせ―理事長交代について―

 このたび、特定非営利活動法人風テラスの創業時より理事長を務めてきた坂爪真吾が退任し、副理事長の徳田玲亜が理事長に就任しましたことをお知らせします。

 私たち風テラスの相談事業は、「性風俗で働く人々の中には、法的・福祉的支援が必要な人がいる」との思いから、2015年、一般社団法人ホワイトハンズの代表者であった坂爪真吾が、弁護士、臨床心理士に呼びかけ、東京都にある風俗店を訪問し、無料の生活法律相談を提供するという形で活動が始まりました。その後、社会福祉士、精神保健福祉士等も加わり、2022年4月、相談事業を行う団体として特定非営利活動法人風テラスを設立しました。

 相談事業は今年10年目を迎え、相談者はのべ1万3,000人を超えました。事業の拡大に伴い、今夏、新たに6名のインターン・プロボノメンバーを迎え、私たちは団体として次のステージに向かっています。

 そして、このたび、風テラスの産みの親であり2年半にわたり当団体の理事長を務めてきた坂爪から、副理事長の徳田へ代表を交代することになりました。今後、坂爪は、新たに団体を立ち上げ、次なる挑戦をしようとしています。

 また、私たち活動を続けていくメンバーも、性風俗で働く人々に法的・福祉的支援を届けるという設立趣旨を胸に今後も相談事業を継続するとともに、のべ1万3,000人以上の相談者と接する中で見えてきた課題への取り組みに挑戦していきたいと考えています。

 これからも風テラスは性風俗で働く方々に必要な支援を届けるとともに、働く中で不利益を被らないための情報の提供、性風俗をやめたいと思ったときにやめられる選択肢の提示、そして偏見差別によって理不尽な傷つきを抱えることのない社会を実現していくことを目指して、皆さまとともに活動していきます。

新役員あいさつ

 10年前 、デリヘル(派遣型風俗店)の待機部屋で相談を始めた頃から弁護士として活動に参加してきました。当時は、この小さな取り組みが一つのNPO法人となり、ここまで大きくなるとは思いもしませんでした。

 団体がここまで来られたのは、言うまでもなく未開の地を恐れず歩む坂爪さんの存在があったからであり、その姿に触発され、活動に加わったメンバーの存在があったからです。そして何より世間の理解が得づらい私たちの活動を寄付や支援という形で支え、日々応援メッセージをくださるサポーターの皆様がいたからにほかなりません。

 しかしながら、10年前から目の前に現れる相談者が置かれている環境は変わっていません。むしろ悪化しているとさえ言えます。性風俗に従事する女性の数は40万人超ともいわれ、コロナ禍前に比べ、5万人以上増えました。一方、社会全体の景気が落ち込む中で、業界の競争も激化し、従事する女性の中でも十分な収入が得られる人は一握りの状況です。奨学金、生活費、借金などの返済のために、性風俗で働くという選択をした人が、むしろ働いたことが大きな足かせとなってしまい、孤立困窮し、私たちの元を訪れています。

 ですが、たとえ性風俗という仕事を選んだとしてもそうでない人と同じように公的支援や民間の支援を受けられるべきです。そして、一人の人として尊重されるべきです。そうした社会を実現するためにこれからもメンバーとともに、風テラスの活動に尽力していきたいと思います 。 

理事長 徳田玲亜                                          

  「性風俗は自己責任」「性風俗 ダメ。ゼッタイ。」という世間のイメージに直面するたび、風テラスの相談者が置かれてきた状況に想いを馳せます。 

 性風俗に従事する人の中には、福祉的支援につながれず、最後の砦として性風俗に足を踏み入れた人も多くいます。彼らに必要なのは、批判ではなく支援です。 私たちはこれまで、福祉施設や行政機関など様々な支援機関とのネットワークを構築し、点ではなく面として相談者を支援できるよう尽力してきました。

 これからもより一層、社会の中での支援者を増やし、性風俗で働いていても、卒業した後でも、安心して頼れる場所が身近にある社会の実現に貢献していきたいと思います。 

副理事長 中島満香                                          

 精神科医・疫学者・大学教員です。風テラスとの出会いは、2020年のコロナ禍の際に、厚生労働省参与(新型コロナウィルス感染症クラスター対策班)として、感染者や医療従事者の差別・偏見に取り組んでいた時でした。風テラスへの相談が激増し、相談態勢を充実させるためにクラウドファンディングを行っていました。当事者目線でお一人お一人に寄り添って相談を行う姿に感銘を受けました。

 性風俗に従事する方々は、いわば「炭鉱のカナリア」であり、この方々を支援する仕組みが成り立たなければ、他業種の方々に困窮が拡大しても支援を受けられなくなる。その前触れだと感じました。クラウドファンディングをぜひ成功させていただきたいと、クラスター対策班の専門家やマスコミ関係者に声をかけて紹介させていただきました。

 NPO法人設立当時の理事、その後アドバイザーを経て、このたび再び理事に選任していただきました。坂爪さんをはじめ理事・監事・正会員、相談員・インターン・プロボノ等のみなさまと協力して、相談事業に当たる現場の方々が安心して働くことができ、なによりも性風俗に従事する方々が安心して悩みを打ち明けられる組織として、ますます発展するように、微力を尽したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

理事 坪野吉孝

2024年12月12日

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